この日は通院の予定があり、それならばと買い物の予定を詰め込んでいた。
通っている病院では受付を済ませると血圧と体重を測定することになっている。血圧測定器の前にはおばあちゃんが座っていて、問診票を書きながら順番を待っていた。
測定が終わり血圧が表示されると、おばあちゃんが想定していたものとは違ったらしく、「何でこうなっちゃったんかねぇ」と突然話しかけられた。
まさか話しかけられるなんて思ってなくて反射的に機器に表示されている数値を見てしまった。確かに結構な高値になっていて、また反射的に「確かに上が高いですねぇ」と返してしまった。
いやそこじゃないだろとセルフツッコミを脳内でしていたら、おばあちゃんはほんとにねぇ、とその後も何やらブツブツ言っていたが何も聞き取れない。
おばあちゃんって本当にブツブツ言ってるのがブツブツって聞こえてしかも聞こえないのかー漫画は嘘ついてなかったな、なんて思いつつもその様子が何だかすごく可愛らしくて、でも大丈夫かなぁ再測定勧めた方がいいかなぁと思っている内にまぁいいわーと行ってしまった。
何を求められていたのか今だに分かっていないものの私の返答そこじゃないわという確信だけは持っており、予想だにしていない数値を見てしまったショックが私に話しかけることで少しでも和らいで、その後がスムーズに進んでたらいいなとにかく祈っている。
何とか病院での用事を終え、次はドラッグストアへ。化粧品売り場をウロウロしていると、店員さんが2人売り場を解体していた。
1人がずっとしょげていて、「この売り場作るの5時間かかったのに…」と言うのが聞こえてビックリして振り返ってしまった。確かに綺麗にずらずらーっと商品が整然と並んでいた。
ただ、ドラッグストアでよく見かけるような売り場であることも確かだった。あれ、そんなに時間かかるんだ。知らなかったー!!
つまり私は設置に5時間もかかる売り場の連続をぽやぽやーっと眺めてはふーん色々あるなーくらいの感想しか持たずに大体素通りしてたのか。
どこにどれだけ時間がかかるのか興味がむくむくと湧いてくる。本当はインタビューしてみたいけれど、引きこもりの私にはそんな度胸もコミュ力もない。
しょげている店員さんは「しかも価格のシールも替えるんですよね…」と本当にしょんぼりしていてかわいそうだったけれど、新しい知見をありがとうと心の中でお礼を言った。次はもっと細かいところも見てみます。そして少しでも報われるといいな。
そんな感じでやっと最寄り駅まで帰ってきたものの、朝10時に家を出て駅に着いたのが14時前。通院の疲労と空腹に加えて、採血して軽く貧血になのかヨレヨレになっていた。
とにかく空腹をどうにかしたかったけど、家でのんびりご飯を食べたくて我慢しながら家まで徒歩20分の道のりを歩き出した。雨続きで幸い気温はさほど高くはないものの湿度が激しく高く、雨傘しか持ってないのに曇天で差すのが憚られ、私と陽光の間を遮るものが何もなくてしんどい。
それでももう歩くしか家に辿り着く手段がないためヨレヨレ歩いていたところ、前方からおそらく中学校のジャージとおぼしき服を着た女の子が歩いてきた。
女の子の腕には食べ物がたくさん抱えられていて、しかもパンらしきものを頬張りながら歩いている!えええー美味しそう。めっちゃわんぱく。
お腹空きすぎて幻想でも見てるのかと思いたくなる程今見たくない景色。しかもめっちゃ美味しそうに食べてるじゃん良い子か。
30歳を過ぎた大人の余裕を奮い立たせ何ともない顔(推定)ですれ違ったものの、何だか妙に記憶に焼き付いてしまって今でもパッとあの時のことを思い返せる。今にも降りそうなどんより空だったのに、あなたの周りだけ光り輝いていたよ。
人混みや、他人との距離が近くなる電車などが大の苦手で普段は力の限り家に引きこもっているけれど、たまに外に出ると何かと色んなことに遭遇する。
しかも最後なんてもうオチみたいなトドメみたいな出会いもあって、たまには外出ろよ面白いこともあるからさって信じてもいない神様に言われたみたいだった。人では力の及ばない何かに色んなポイントを敷設されて、ことごとく引っかかってった気分だった。
くまふくでした🐻
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